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そして、謎はつづく 投稿者:はらぴょん  投稿日:12月10日(金)15時32分46秒
W・P・パターソン著・古川順弘訳『グルジェフを求めて〜<第四の道>をめぐる狂騒』(コスモスライブラリー)を読了しました。
この本は、第一章でオスカー・イチャーソとアリカ・システム、クラウディオ・B・ナランホとSAT(真理の探究者たち)、要するにエニアグラムを、世俗的なパーソナリティー・ツールにしてしまったエニアグラム主義者を攻撃し、第二章で、ロバート・バートンの友愛団を批判し、第三章で、グルジェフ思想の起源を、既成の宗教に求めるボリス・ムラヴィエフとロビン・アミスを断罪しています。
オスカー・イチャーソ批判については、『エニアグラム進化論』における批判と共通するものがあります。あなたの性格をエニアグラムで説明しますとか、人間関係のトラブルをエニアグラムで解決します、とかのキャッチフレーズが市場に出回っていますが、もとを辿るとイチャーソとナランホに行き着くということですね。彼らは、グルジェフウスペンスキーの思想を、薄めて、無毒化して、流通させてしまった人々といえるでしょう。
ジョン・C・リリーがアリカを訪れていることは知っていましたが、『グルジェフ・ワーク』(平河出版社)の著者キャサリン・リョルダン・スピースもSATと関係があったのですね。この本によると、彼女はその後性格エニアグラム論の罪悪に気づき、そこから袂を別にしたようですが。
ロバート・バートンの<友愛団>というのは、初耳でしたが、無料の本のしおりとかで<グルジェフウスペンスキー・センター>を宣伝している団体なんですね。しかし、彼らの考えが、どこがグルジェフウスペンスキーと関連があるのか、この本を読む限りではボロ儲けのための団体にしかみえませんね。
さて、問題のムラヴィエフについてですが、W・P・パターソンは、ムラヴィエフがグルジェフ思想の起源を既成の東方正教会に求めることに反対し、ムラヴィエフが重視する秘教的伝統を伝える図像が、『グノーシス』の参考文献となった『フィロカリア』、クレメンスの『ストロマテイス』等にないし、なにより<第四の道>の中心的行為となる自己想起や自己観察に対する言及が『グノーシス』には全くないとこき下ろしています。しかも、東方正教会の教えと帳尻を合わせるために<第五の道>まで作り出しているとなると、『グノーシス』が未読なので最終的な判断は保留にしますが、パターソンの批判は強烈なものがあります。
しかし、そうなるとグルジェフの思想は、どこから着想を得たのでしょうか。「お好みならば、これは秘教的キリスト教だといっても構わない」といった際の「秘教的キリスト教」とは?「有史以前のエジプト人はキリストが生まれる数千年前にすでにキリスト教徒だったのだ。」(『グルジェフを求めて〜<第四の道>をめぐる狂騒』(P91〜92参照)と語るグルジェフは、なにを言わんとしていたのでしょうか。
キリストが生まれる以前のキリスト教という言い方は、仏陀が生まれる前にも何人もの仏陀(覚者)がいたという言い方を連想させます。グルジェフが関心をもった地球上のポイント、ヘブライ・エジプト・ペルシア・ヒンドゥーに、古代において高い意識レベルへの到達達成を成し遂げた人のなんらかの痕跡があったのでしょうか。

グルジェフを求めて―“第四の道”をめぐる狂騒

グルジェフを求めて―“第四の道”をめぐる狂騒