ハーモニーフィールドのBBSに、「『スケッチブック』の種明かし」を投稿。

http://bbs.infoseek.co.jp/Board01?user=goro425999
以下は、その再録。
ブレ王で、「スケッチブック」の公開が始まりましたが、ごろにゃんさんは、そこで「「イマジン」のような」と曲の紹介をされています。この表現は、とても的確だと思います。
「夢想家」は、フール・オン・ザ・ヒルのフール。タロットの0を暗示させます。「所有もない」は、サージャント・ペパーズのペパーズが所有格になっていないことを暗示させます。そして、主題。戦争反対で、愛と平和を志向し、「国境も所有もない世界を夢見」たのは、ジョン・レノンそのひとでした。
さて、ジョン・レノンの死から始まる小説に、フィリップ・K・ディックの『ティモシー・アーチャーの転生』(創元推理文庫)があります。これは『ヴァリス』『聖なる侵入』と続く連作の最後を飾る普通小説です。ディックは、SFでやったことを、普通小説で再度捉えなおそうとします。ナグ・ハマディ文書という聖書の起源を解き明かす可能性をもった古文書の探求と、自分さがしの旅が重ねあわされてゆきます。
この連作の中で、ストーリー的な面で面白いのは、SF仕立ての『聖なる侵入』です。
本物の神様の子供が登場するのですが、そのままで邪悪な地球に突入するとどうかされてしまうといけないので、自分が何者であるかを忘れたフールの状態で突入するわけです。地上には地上の権力と手を結んだ教会があります。教会というと、神様にお祈りをするところですが、ディックによると、本物の神様が出てこられると困るというのです。地上の権力として成り立たなくなりますからね。
私にはディックの小説が、ジョン・レノンの時代のひとつの理想を示すモデルのように思われたのです。