アレクセイの花園に、「2005年、笠井潔を巡るあれこれ」を投稿。

詳細は、 http://8010.teacup.com/aleksey/bbs を参照されたし。以下は、そのための元原稿。
講談社文庫版『ヴァンパイヤー戦争』7巻から11巻の刊行が残されているために、笠井さんは毎月10時間程度のゲラへの加筆・修正作業を行うようです。
TYPE-MOONによる全面的なバック・アップ体制により、毎回、武内崇さんのイラストを文庫のカバーにつけ、あたかもライトノベルであるかのように、とらのあなをはじめとするアニメ・ショップに文庫を置くことにより、新規読者の開拓を図ろうとしているわけですが、その割には「『ヴァンパイヤー戦争』って凄いね」なんて声は聞いたことがありません。知名度が上がったのは、TYPE-MOONの方のようです。(その道筋のひとの間で、早くも次回作となるノベルゲーム『Fate/hollow ataraxia』(フェイト/ホロウ アタラクシア)の話題がでていますし、「メフィスト」の最新号で、奈須きのこさんと綾辻行人さんが対談してますし……。ここで綾辻さんが奈須さんの文体について、時系列や主語が転々とするので読みにくいとの留保をつけながら、カッコいい文体だといっていますが、どう思われますか?)思うに以前、笠井さんというと、知名度はともかく、読み応えのある本を書く人というイメージでしたが、最近は売れさえすれば、たとえ読者が表紙の女の子に萌えているだけで、中身を読んでくれなくってもいいと考えているようにも見えます。
講談社メフィストで掲載中の『瀕死の王』は、<矢吹駆>シリーズのナディア・モガールと、<天啓>シリーズや「黄昏の館」の宗像冬樹が、日本の昭和の終焉期を舞台に殺人事件に巻き込まれるというもので、『サマー・アポカリプス』で取り上げられた『二十世紀の神話』の話だとか、『ヴァンパイヤー戦争』のムラキの正体とかについても言及されています。これらは笠井さんの読者サービスなのだと思うんですね。以前、笠井さんというと、読者サービスからほど遠い作家のように思われたのですが、最近はそうでもないようです。しかし、この種のサーピスは、<矢吹駆>シリーズと<天啓>シリーズと『ヴァンパイヤー戦争』を読んでいる読者にしかウケないので、効き目のある対象者は限定されてしまうように思います。
対談「笠井潔をめぐって」では、笠井さんに批判的な立場の発言をしているわけですが、相矛盾するようですが、議論の前提として、もっと笠井さんの本を読む層が増えて欲しいとも思っています。
現在、笠井さんはジャーロに、<矢吹駆>シリーズ最新作『吸血鬼の精神分析』を掲載されていますが、このジャーロの最新号2005年冬号に、柳川貴之氏の評論「ニアミステリの関係」第18回が掲載されています。実は昨年末、竹本健治ファン倶楽部<軟体動物同盟>の掲示板に、柳川氏の評論は接続詞の使い方が変だし、なにを言いたいのか自分でもわかっていないのでないかという趣旨の書き込みがありました。調べてみると、柳川貴之氏は探偵小説研究会の会員で、すでに園主さまに「お荷物としての「解説」」で、その稚拙な解説ぶりを批判されていたことがわかりました。ネット上で公開されている評論を読んでみましたが、確かによくわからない文章でした。
ここで問題となるのは、探偵小説研究会に加入すると、解説の水準に関わらず、一般向けの商業誌に掲載されやすくなるのではないか、ということです。とすれば、これは由々しき問題ではないか、と思われます。
あと笠井さん関連で注目すべきトピックスは、『天啓の虚』と『無底の王』の単行本化はあるか、否か、ということです。前者は『ウロボロスの純正音律』の完成を見計らって、その批判を織り込み、加筆・修正をした上で出してくる気がします。後者はコムレ・サーガに分類できますが、オウム真理教事件を連想させる内容のため、さらに封印が続くと考えます。