法解釈その1
靖国神社への日本国首相の公式参拝について、私なりの法解釈を展開してみよう。
日本国憲法第20条は、(信教の自由、政教分離)を規定しており、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」となっている。
首相の行為は、第20条2項で禁止している特定の宗教団体に国が特権を与えることに該当し、3項の禁止している宗教的活動に該当し、その結果として国民の信教の自由を著しく損なうことに繋がると判断できる。よって、この行為が憲法第20条に反すると考えられる。
ここで参照されるべき判例は、1985年に行われた中曽根康弘首相(当時)の公式参拝を巡る違憲訴訟である。この訴訟は福岡と大阪で行われ、1992年2月の福岡高裁では首相が公式参拝を繰り返すならば違憲となる判断を、1992年7月の大阪高裁では違憲の疑いが強いとしたが、原告の損害賠償請求自体は退けた。
具体的な不利益の存在証明がない場合、日本の司法では門前払いになる確率が高い。これは裁判件数を削減するねらいがあると考えられるが、この傾向および統治行為論による司法判断の回避などは、特に違憲訴訟の場合、憲法の理念が具体化されない現状を是認する結果につながり、ひいては三権分立のバランスを崩すことになる危険性を持っている。