覚え書き

[以下の覚え書きは、ミクシィに06月25日に投稿されました。原稿というよりは、そこに至るアイデアの発端が書かれています。]
◆ベルナール=アンリ・レヴィの『サルトルの世紀』の邦訳が出た。これは『存在と無』のサルトルを、反ヒューマニズムとして評価し、『実存主義ヒューマニズム』のサルトルを、だめなサルトルとするものである。レヴィによると、ヒューマニストサルトルが、やがて『弁証法的理性批判』という駄作を書いたということになる。
この本は、サルトルの敵側の書物と見ていいだろうと思う。
レヴィは、ヌーヴォー・フィロゾフ。フランスのマルクス葬送派というべき存在である。アルチュセール派→反マルクス主義人権派で、今回はサルトル生誕100年にタイミングを合わせて、こういうサルトルの本意に合わないであろう大著を出してきたというわけである。
乙一の『GOTH』の角川文庫版が出た。本格ミステリ大賞を受けた時のことをあとがきに書いている。『スレイヤーズ』を読むことで、ライトノベルの世界に嵌った乙一は、『GOTH』を書く際に、本格ミステリの楽しさを読者にわかってもらおうと、ライトノベル本格ミステリのテイストを入れようとしたという。しかし、本格ミステリ大賞といわれてもピンと来なかったようで、またも純真な青年が大人の事情に巻き込まれてゆくような書き方で、この受賞の顛末を語るのであった。
殊能将之の『鏡の中は日曜日』の講談社文庫版が出る。解説は、法月綸太郎パウル・ツェランとか、木田元とかの名前が踊っている。
中井英夫の『彼方より 完全版』が刊行される。鶴見俊輔が序文で、現在の日本が戦争に向かっているということを書いている。やはり、そう感じる人がいるのだと改めて思う。例えば、首相がリスクを承知で靖国参拝にこだわるわけは、近々自衛隊に戦死者が出るがゆえの準備としか思われない。安全に留意するとはいえ、抜本的な安全策をとることは念頭にないのだから、こうした可能性は、首相の頭の中では想定される範囲内なのだろう。無論、そういった事態が起きても、撤収しないために、靖国を必要としているわけだ。