『成功学キャラ教授』

清涼院流水著『成功学キャラ教授〜4000万円トクする話』(講談社BOX)を読み終える。

成功学キャラ教授 4000万円トクする話 (講談社BOX)

成功学キャラ教授 4000万円トクする話 (講談社BOX)

この小説は、キャラ教授による全10回の成功学の講義が収められている。
著者は「あとがき」で「親兄弟が経済系の人間である血筋のせいか、昔からビジネス書の類いが大好きで」「<成功本>に無視できない共通点がある」ことに気づいていて、それがこの本に反映していると書いている。
確かに、この小説はビジネス書の濃縮版、人生哲学の高濃度版という印象を与える。『ジョーカー』が「メタ・ミステリー」ならば、『成功学キャラ教授』は、「メタ・ビルディングスロマン」と言うべきかもしれない。
さて、その流水のビジネス哲学だが、『コズミック』を書いた人というとすごくストレンジなのではないかと思われるかもしれないが、実にまっとうで、正統的なものである。(このまっとうさは、多分文学を仕事をしている人のなかでは、かなり異端的なのではないか。)
大きな目標とそこに至るまでの小さな目標を設定し、まずは小目標を実現するために、即実践せよとか、自分にはここまでしかできないといった限界を設けないようにする事とか。最後、利他業に至るところも納得がいく。
この本は、香り高き文学を指向する人々には薦めようとは思わない。(そういう人は、文学のなかで4000万円稼ぐ方法を伝授されるとなると、拒絶反応を起こすのではないか。)
しかしながら、社会的な成功を収めたい人々、お金儲けをしたい人、満足のいく生き方をしたい人々には、いい本だ。
本書を繰り返し読み、この実践哲学をみっちり叩き込めば、きっとプラスに作用するだろう。
この本のなかで眼を惹くことは、マイナスの現実を前にしても、自分にとってなんらかのプラスの意味があるものとして考えよとか、自分にとってマイナスの人であっても、なにか美点を見つけよ、としていることである。
意見の違う人がいるとして、頭ごなしに否定するのではなく、あなたの立場は判りますが、私の考えはこうです、と言えばいいとしていることである。
あとニーチェの超人=スーパーマンとし、人間は誰でもスーパーマンになれるし、すでにあなたがたはスーパーマンであるとしていること。スーパーマンは、自己の可能性に限界を設けない人、限界が固定観念にすぎないことを知っている人だというのである。
さらには、人間の仕事は最終的に自己の利益のためではなく、人のためになっていないと本物の満足は得られないとしている。

すご〜く、すご〜く、意外なのですが、なぜかヤスパースに近いような印象を受ける本である。
キャラ教授などというトンデモなく、ライトな感じのタイトルの本だというのに……。