ストロベリーソングオーケストラによる演劇公演「密室のテキスト」に

ストロベリーソングオーケストラによる演劇作品「密室のテキスト・白」
http://www.ustream.tv/recorded/14288949#utm_campaign=twitter.com&utm_source=14288949&utm_medium=social
この演劇は、約30名ほどの人のツイッターのつぶやきが取り入れられており、私のつぶやきも使われています。
私のページは、以下のページです。
http://twitter.com/#!/harapion
以下は、そこから使用された部分の解説です。


#15secretroom この世界はすべて機械で出来ていて、誰一人例外なく、その機械に組み込まれている。私たちは機械なのだ。この私も然り、そして、あの司令官や胎動し始めた新時代の社会も然り。それが、このドラマの真相なのだ。狂気を帯びた凶器。街は機械マニアの少女に支配されている。
2010年10月16日 0:16:15 webから

狂気を暗示させる常軌を逸した表現は、計算されたものです。人間は<機械>であるという認識は、ロシアの神秘思想家グルジェフから来ているし、ゲルニカの『新世紀への運河』とかに見られるメガロマニアックな機械崇拝も、頭の片隅にありました。
司令官がいるとか、機械であるとか、何かに操られているというのは、統合失調症にみられる症状でもあります。

#15secretroom 硝子に映った少女の横顔は、今も忘れない。電球の明かりで、青白く窓硝子に映っていた。少女が床下の装置に電球を取り付けた瞬間、住居は基より、街全体が生気を持った怪物と化して動き始めた。そして、部屋の片隅にあった司令官の姿をしたアンドロイドの眼が点滅した。
2010年10月16日 0:32:58 webから

硝子に映るとか、青白くとかは、美的なイメージを喚起させるためです。
怪物とか、アンドロイドの眼とかは、怖がらせようという狙いからです。
恐怖と戦慄。魂が震えることで、伝わるものがあるのではないでしょうか。

#15secretroom それらの悪夢は終わる。すべてのメガマシーンは、砕け散り、崩壊するだろう。システムの中心、すべての中枢に、本物の死をつきつけることによって。神経回路のように絡まった指令システムを切断せよ。
2010年10月16日 0:37:48 webから

幻想に捉われるのではなく、幻想を破壊すること、ストロベリー的に言えば、幻想の切断に興味があります。
システムの中心があって、そこから樹系状に指令が言っているとすれば、権力の破壊ないし切断には、この中心部を壊す必要があります。
単に恐怖にとどまるのではなく、そこからの脱出口を示したかったので、こういったセリフを書きました。

#15secretroom 闇のなかに光を求めるのではない。闇のなかに、より深い漆黒の闇を求めるのだ。そうした否定のロジックを積み重ねた果てに、あるいはこれ以上否定できない、最低限の基盤を見出せるのかも知れない。 2010年10月16日 0:40:49 webから

普通だったら、闇からの脱出には、トルストイみたいに「光あるうちに光のなかを進め」と言いますよね。
ところが、ひねくれているので、より深い漆黒の闇と書いてしまう。ここが私の悪い癖です。
しかし、徹底的な否定の果てに、これ以上否定できない地点にたどり着き、そこから出発すれば、これ以上強いものはないという発想もあるのです。
すごく非合理的な表現が多いのですが、考えの道筋としては、デカルトとちょっと似ています。デカルトはあらゆることを疑い、これ以上疑い得ないものとして、自分自身=コギトに到達し、そこからすべてを始めようとしました。
やっている領域はまったく違いますが、手順としては似ているんじゃないかと思います。

#15secretroom 少女が私宛てに手紙を書いているというのは、願望思考であり、快楽原則が私に見させた幻想である。今や、幻想は破壊される。私のことを思い続けている少女というのは、虚構であり、そのような少女は存在しない。
2010年10月27日 1:35:07 webから

なんかツライ表現なのですが、現実を見ろ、逃げるなってことですね。
フロイトが現実原則とか、快楽原則といったことを踏まえています。
自分の拠って立つ地点を正しく把握しないと、真の解決はないんだよね、というメッセージが隠されています。

#15secretroom 切手の貼られていない手紙。誤配される手紙。遅配される手紙は、コミュニケーション不全症候群、郵便的な不安を象徴的に語っている。人は得てして顕在化したメタファーを見落としやすいが、そこには余りにも強烈過ぎるがゆえに隠蔽された欲動を見ることができる。
2010年10月27日 1:43:23 webから

なんか難しい表現ですね。
書いた自分が、今読んでも、意味がわからない。
演者の方はわかったんでしょうか。
書いてたときは分かっているけど、しばらくすると、なんでこんな文章を書いたんだろうと首をひねるときがあります。
郵便的な不安というのは、東浩紀を意識していますが、前後がわからない。
あまりに強烈な欲望は、私が私であることを破壊する恐怖があるから、それを回避する機制が働くといっているのか。たぶん、そうだ。そういうことにしておこう。

#15secretroom 私の過ちは、コミュニケーションを断絶させるような心の壁を築いてしまったことだ。理想的な少女像を創り上げ、現実の少女に理想像を強要してしまったことだ。私が恋焦がれていたのは、現実の、生きている少女ではなく、観念の、不在の少女だった。
2010年10月27日 2:23:10 webから

このあたりは、ストーリーをつくろうとしていますね。
そして、このストーリーは、完成版の演劇とはちょっと違う。
舞台セットは2段式で、上に主人公である男がいて、下段に少女がいて電球を持っている。
最初、男は少女が司令官という恐ろしいやつに閉じ込められていると思い込むが、実はそうではなく、男が少女の奸計にはめられて、密室に閉じ込められ、ある恨みから男を発狂させようとしていることに気付く。
その恨みの理由として、男が少女に投影した理想像と現実のギャップを掲げようとしています。

#15secretroom そう、少女の声が私に聴こえるのは、幻聴。病んでいるのは、少女ではなく、この私。
2010年10月27日 3:18:52 webから

恨みによる奸計によって、外界からの刺激を断たれた私は、いわばアイソレーション・タンクのような状態になり、暗闇のなかを漂う記号と化す。
そういった危ない状態を表現しようとしています。

#15secretroom ふっふっふ。だんだん判ってきたぞ。この世界のからくりが。床に敷き詰めたビロードの布の端を、いきなりひっぱってみろ。そこに広がる無数の斑点。水玉模様と思えたそれは、生きていて、蠢き、蠕動し、やがて開き始め、妖しい金色の光を放ち始める。
2010年11月16日 0:21:11 webから

少女が男を発狂させるにあたって利用したのは、目玉の模様です。
目玉は、あらゆる生物に備わっている恐怖を喚起させる最も強い刺激です。
毒々しい蛾の羽にも、目玉模様がありますね。
これは威嚇のための模様です。
サルトルも、他者のまなざしで、この私が石になるというような表現で、人間の疎外について考えたのですけれど、これまた目玉の恐怖を基にしているといえますね。
バタイユも、眼球譚で、目玉と玉子の幻想を語っています。

#15secretroom 無数に犇めき合っているのは、眼だ。生きた人間の眼だ。 2010年11月16日 0:23:37 webから

もう脅しですね。
ホラーです。

#15secretroom ここは身の毛もよだつおぞましい密室だ。すべては生きた眼の玉から出来ている。壁を見ろ。あそこも、ここも、一面を覆いつくしているのは、瞬きする生きた眼だ。それらの眼は、この俺を見ている。 2010年11月16日 0:28:50 webから

このあたりは、アクションを伴うと、迫力が出るんじゃないかと考えながら書きました。「壁を見ろ」とかね。
それによって、観客の視線が、そちらに引き寄せられる。客席にざわめきが波紋のように広がり、恐怖の戦慄が宇宙を形作るようになる。
ちょっと悪魔的な言葉の使い方です。

#15secretroom この俺が壁を見ているのではない。壁が……一面を覆いつくす生きた瞳が、この俺を見ていて、この俺を計量し、測定し、値踏みしているのだ。
2010年11月16日 0:33:11 webから

とにかく、何かにされているという受動態の恐怖をつくりたかったのです。

#15secretroom なんて厭らしいんだ。壁を覆いつくす目の玉同士が通じ合い、連携して、ぴくぴく動いたかと思うと、やがて俺を取り囲むように、螺旋状の渦を描き始めた。 2010年11月16日 0:36:42 webから

「なんて厭らしいんだ」で、身体的な反発を表現したいと思いました。
言葉だけの反発とか、こころの反発とかあるんですが、もっと根源的な身体の反応。
「ぴくぴく」とかね。
このあたり、なにものかに憑かれたように書いてたな。

#15secretroom きっ。目の玉の奴、俺の頬に飛び乗りやがった。 2010年11月16日 0:38:10 webから

このセリフが浮かんだ時、ふっと笑ってしまいました。
セリフをつくっているっていう感じじゃないですね。言葉のほうが降りしてくる。後は素直に従うだけ。

#15secretroom 夢だろ。夢。こんな馬鹿なこと起こるはずないもの。第一、科学的に説明できないだろ。夢だったら、早く目覚めさせておくれよ。このまま、瞳が全開するなんて、嫌だよ、嫌。
2010年11月16日 0:45:50 webから

うーん、いかれてますねぇ。

#15secretroom なんて、こったい。恐怖とは、醒めない夢の別名だったのか。
2010年11月16日 0:47:13 webから

「醒めない夢の別名」とは、見事に決まったな、と思いました。
今、書けと言われても、思いつくとは限らないです。

最初は計算もあったけど、最後は何かに憑かれたようにというか、弾みで出てきた言葉を控えているだけという状態になってますね。
ちょっと得られないような妙な心理状態になりました。

こんなところかな。

あとは【密室のテキスト・黒】がありますね。