ボリス・ムラヴィエフについて

小森健太朗さんの「お茶屋掲示板」http://362.teacup.com/kkomori/bbs? に、「ボリス・ムラヴィエフについて」を投稿。以下は、その再録。

前田樹子さんの『エニアグラム進化論』(春秋社)を読むと、グルジェフのシステムの起源を、ボリス・ムラヴィエフは『グノーシス』の中で東方キリスト教の中に埋め込まれたエソテリックなキリスト教に見出したとあり、ボリス・ムラヴィエフの『グノーシス』が気になっていますが、この本は未訳ですし、言及したサイトも少ないようです。(ここの読書録は、その数少ないサイトのひとつでした。)

エニアグラム進化論―グルジエフを超えて

エニアグラム進化論―グルジエフを超えて

グノーシス主義といえば、ナグ=ハマディ文書ですが、ナグ=ハマディ文書の直接的影響を受けているのは、カール・グスタフユングフィリップ・K・ディックです。
ヴァリス (創元推理文庫)

ヴァリス (創元推理文庫)

しかし、ナグ=ハマディ文書を知らずして、グノーシス主義的な思想を展開した人々も存在します。ハンス・ヨナスの『グノーシスの宗教』(人文書院)は、ハイデッガーなどの実存思想に、グノーシス主義のよみがえりを見ましたし、中沢新一さんは『はじまりのレーニン』(岩波書店)で、ロシア革命のなかに、グノーシス主義のよみがえりを読み取ろうとしました。『はじまりのレーニン』が出た際に笠井潔さんは書評で、レーニンより、シモーヌ・ヴェイユの方がグノーシス主義的であると書いていましたが、ヴェイユ実存主義系です。この点に関しては、私もレーニンよりヴェイユの方が、グノーシスという言葉が似合うという気がします。
グノーシスの宗教―異邦の神の福音とキリスト教の端緒

グノーシスの宗教―異邦の神の福音とキリスト教の端緒

はじまりのレーニン (同時代ライブラリー (333))

はじまりのレーニン (同時代ライブラリー (333))

実存主義系の文学の起源を辿ると、ドストエフスキーにたどり着きます。ドストエフスキーの文学の土台にあるのは、東方キリスト教です。東方キリスト教グノーシス主義というと、中沢新一さんの『東方的』(せりか書房)を連想します。『東方的』は、人間の精神の高次元性に言及しています。
東方的

東方的

つまり、グノーシス主義は、ナグ=ハマディでは文書という形で、もうひとつはロシアでロシア正教の中に内蔵される形で保存され、解読者が現れることによって生きられたものとして復活するようになっているのではないかと思います。

ラスプーチングルジェフもロシアですし、マダム・ブラバツキーもロシアです。東方には、なにかあるのです。深い精神性の息づく世界が。