2005-01-01から1年間の記事一覧

眼が悪い〜『清涼院流水のぶらんでぃっしゅ?』に関する妄言

清涼院流水著『清涼院流水のぶらんでぃっしゅ?Special Guest 森博嗣 西尾維新 飯野賢治』(幻冬舎)について考えてみよう。 ・今回の執筆は、清涼院流水氏の第一子誕生の時期と重なったこともあって、この物語の主人公常盤ナイトの胎児の時期から始まり、出産…

聖体示現(ヒエロファニー)としてのミステリ

本格ミステリのトリックを分類してゆくと、密室殺人、顔のない死体、暗号、一人二役、意外な犯人……といったものが挙げられる。(より詳しく知りたい方は、乱歩の『続・幻影城』や間羊太郎の『ミステリ百科事典』を参照されたし。) 密室殺人の場合、より完璧に…

『探偵小説と二〇世紀精神』

笠井潔の『探偵小説と二〇世紀精神〜ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つか?』は、前半が「1 形式体系と探偵小説ロジック」、後半が「第三の波とポストモダニズム」となっている。 前半は法月綸太郎の言う<後期クイーン的問題>に呼応した内容を扱っており、…

『アワーミュージック』、あるいは戦争の時代を超えて

ジャン=リュック・ゴダール監督作品『アワーミュージック(原題:Notre Musique)』のテーマは、戦争と分裂の時代にあって、わたしたちは世界中を包み込むわたしたちの音楽のような愛と調和を創造することができるかということに尽きる。 この作品は、三部…

杉澤鷹里著『射玉行』を読む

杉澤鷹里著『射玉行』は、決定的に新しいスタイルで書かれた小説である。 著者は、「笠井潔さんを父と仰ぎ、竹本健治さんを母と慕う」(http://haruka.fool.jp/cgi/bbs2/light.cgi 投稿日:2005/09/27(Tue) 14:37参照)と書いているが、この小説はミステリで…

『ともだち刑』における実存的な欲望

雨宮処凛の小説の主人公は、常に誰かに評価され、かけがえのない存在として、世界に受け入れられたいという実存的な欲求を抱えている。 『ともだち刑』の主人公浜田もまた、そういう欲求をかかえた学生である。 ともだち刑作者: 雨宮処凛出版社/メーカー: 講…

「降りる自由」は存在しない〜 『波状言論S改』について

東浩紀編著『波状言論S改〜社会学・メタゲーム・自由』について考えてみよう。この本は、東浩紀+鈴木謙介が聞き役であり、「第一章 脱政治化から再政治化へ」のゲストは宮台真司、「第二章 リベラリズムと動物化のあいだで」のゲストは北田暁大、「第三章 …

『マルチチュード ~時代の戦争と民主主義』

マルチチュードとはなにか。 時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)" title="マルチチュード 上 ~時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)">マルチチュード 上 ~時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)作者: アントニオ・ネグリ,マイケル・ハート,幾島幸子出版社/メー…

カール・ヤスパースについて

文庫で読めるカール・ヤスパースの本というと、『哲学入門』(草薙正夫訳、新潮文庫)があるが、これにしても最近、品切れ状態のようである。 ヤスパースは、ドイツのキリスト教的実存主義者。とはいえ、彼の哲学は、「哲学すること」の基本的なあり方を明か…

ケイト・ブッシュ『エアリアル』

ケイト・ブッシュの12年ぶりの新作は『エアリアル』。初の2枚組である。エアリアルアーティスト: ケイト・ブッシュ出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン発売日: 2005/11/02メディア: CD クリック: 12回この商品を含むブログ (39件) を見る 前作の…

天啓の涛 (うねり) I

以下は、ミクシィに発表された笠井潔に対する『天啓の宴(うたげ)』、『天啓の器(うつわ)』のレビューです。 このレビューは、小説形式を採用しており、HP「薔薇十字制作室」で公開している小説『天啓の骸(むくろ)』の全面改稿版となっています。−−−−−−−−−−…

天啓の涛 (うねり)II

以下は、ミクシィに発表された笠井潔に対する『天啓の宴(うたげ)』、『天啓の器(うつわ)』のレビューです。 このレビューは、小説形式を採用しており、HP「薔薇十字制作室」で公開している小説『天啓の骸(むくろ)』の全面改稿版となっています。−−−−−−−−−−…

天啓の涛 (うねり) III

以下は、ミクシィに発表された笠井潔に対する『天啓の宴(うたげ)』、『天啓の器(うつわ)』のレビューです。 このレビューは、小説形式を採用しており、HP「薔薇十字制作室」で公開している小説『天啓の骸(むくろ)』の全面改稿版となっています。−−−−−−−−−−…

コミュニティ[Wilhelm Reich]

ミクシィ内のコミュニティ[Wilhelm Reich]の管理権を引き継ぐことになり、コミュニティ[Wilhelm Reich]のトップページの刷新を行った。以下は、その原稿。【Wilhelm Reich:ウィルヘルム・ライヒとは?】 オーストリアのガリシア生まれ。 精神分析学者。…

コミュニティ[艾敬]について

ミクシィ内に、コミュニティ[艾敬 【ai jing】]を開設した。 関心のある方は、ぜひ入会されたし。【艾敬】 ・(読み)aijing アイ・ジン ・血液型 A型 ・身長 1.62m ・中華人民共和国出身のシンガーソングライター。 ・1993年に発表した「…

『奇偶』あるいは非因果的連結の世界

山口雅也著『奇偶』は<偶然>に関する形而上学的思弁小説である。 奇偶 (講談社ノベルス)作者: 山口雅也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/09/06メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (41件) を見る推理小説では、西欧合理主義に沿う推理に…

限りなくファシズムに近いグレー

今回の衆議院選挙の結果に関する感想は、立場によって異なるのだろうが、私にとって戦争加担勢力が議席を2/3以上確保したことを意味する。 戦争加担勢力の定義は、日本国憲法、特に第9条の改憲を狙う勢力ということである。(その意味で、与党=自民党+…

『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』論

※以下はミクシィ発表のレビューからの転載です。 『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』は、『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティ)である。存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて作者: 東浩紀出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1998/10/01メ…

ニンギョウがニンギョウ

なぜ『ニンギョウがニンギョウ』は、講談社ノベルスなのに函入りなの? なぜ『ニンギョウがニンギョウ』は、帯文が右から左に書かれているの? なぜ『ニンギョウがニンギョウ』は、橙色の薄紙で本が包まれているの? なぜ『ニンギョウがニンギョウ』は、レト…

杉澤鷹里氏の『射玉行』、2005.9.26発売予定

「予告! 投稿サイト“百円文庫”から生まれた秀作 杉澤鷹里『射玉行』9/26発売予定」 ・ザウルス文庫 http://www.dbook.co.jp/spacetown/zero-books/index.jsp ・神保町ゼロ丁目書店 http://www.zero-books.com/top.html[杉澤鷹里氏の略歴] 創作系掲示板「…

国家民営化論、あるいは弱肉強食の肯定

笠井潔の『テロルの現象学』は、マルクス葬送派の論客であることを表明した著作であり、マルクス主義による、「絶滅=労働収容所」群島を、集合観念の噴出によって転覆させようとするねらいを持っていた。しかし、集合観念による革命のヴィジョンは、笠井自…

魔女の家BOOKS 高等魔術■魔女術体系 とは?

「魔女の家BOOKS 高等魔術■魔女術体系」についてまとめてみたので、掲載する。なお、このシリーズ本は、どうしたわけか現在刊行が中途で打ち切られている。1 『アプラメリンの魔術』S・L・マクレガー・メイザース編 1992年刊行 2 『ソロモンの…

コミュニティ[小森健太朗]

ミクシィ内に、[小森健太朗]というコミュニティを立ち上げた。 自分の立ち上げたコミュニティとしては、[薔薇十字制作室ニッポンロッヂ][GS・たのしい知識研究会][週刊本][山口昌男☆素晴らしきかな人類☆]に続く5つめのコミュニティとなる。以下…

質問者の傾向と対策

聞き手クレール・バルネによるジル・ドゥルーズの『ドゥルーズの思想』(大修館書店、田村毅訳)には、次のような記載が見られる。 「お前は白か黒か、男か女か、金持ちか貧乏か、等々。お前は右半分にするか左半分にするか。つねに二進法の機械が作動し、役割…

『テロルの現象学―観念批判論序説』について

※初出は、ミクシィのレビューです。 笠井潔は、『テロルの現象学―観念批判論序説』を、自分が「連合赤軍事件に対して有責であるという思い」から書いたという。有責であるというのは、かつて黒木龍思というペンネームで「拠点」「情況」「構造」「革命の武装…

大衆の利害を問う

吉本隆明の『超資本主義』(徳間文庫)には、次のような記載が見られる。就業者の人口からみても、国民総生産からみても、第三次産業が過半数を占めるに至った「先進地域国家で、建設や土木工事や道路や港湾の改修など、第二次産業に属する建設業に公共事業…

GS・たのしい知識 vol.3 特集 千のアジア

【書誌データ】 発行日:1985年10月15日 編集人:浅田彰+伊藤俊治+四方田犬彦 発行所:冬樹社 【目次】 ◆狂言回廊 豊崎光一 スタイルの闘い(そのニ) 松浦理英子 優しい去勢のために3 肛門、此岸のユートピア 島田雅彦 アルカゴーリク(アル中)…

GS・たのしい知識 vol.2 特集 POLYSEXUAL〜複数の性

【書誌データ】 発行日:1984年11月15日 編集人:浅田彰+伊藤俊治+四方田犬彦 発行所:冬樹社 【目次】 ◆狂言回廊 草野進 管理野球とは、火事場泥棒の倫理である ねじめ正一 五福星はわんこそば大全 豊崎光一 正統と異端あるいはラグビーとフランス 如…

GS・たのしい知識 vol.1 特集・反ユートピア

【書誌データ】 発行日:1984年6月10日刊行 編集人:浅田彰+伊藤俊治+四方田犬彦 発行所:冬樹社 【目次】 ◆GS狂言回廊 佐藤良明 英語基本動詞研究宣言 草野進 プロ野球は外見が実力につながる表層的な見世物である 松浦理英子 優しい去勢のため…

GS・たのしい知識について

※以下は、ミクシィ内で私が主宰するコミュニティ「GS・たのしい知識研究会」で発表した原稿です。