質問者の傾向と対策

聞き手クレール・バルネによるジル・ドゥルーズの『ドゥルーズの思想』(大修館書店、田村毅訳)には、次のような記載が見られる。
「お前は白か黒か、男か女か、金持ちか貧乏か、等々。お前は右半分にするか左半分にするか。つねに二進法の機械が作動し、役割分担を決め、すべての回答が前もって想定された質問を通過せねばならぬようにしている。なぜなら、すでに質問自体が、支配的な意味作用に則してありうるべきだと仮定された回答をもとに計算されているからである。解読用の格子を通らぬものはすべて、実際に理解されない、そのように格子が定められているのである。」(34頁)
ニ項対立をつくって、YES/NO、ON/OFFを聞くこと。これによって、回答者は知らず知らずのうちに、質問者があらかじめ想定したプランに沿って誘導される。YES/NO、ON/OFFに答えた後で、回答者は次のニ項対立の質問を突きつけられる。こうして、樹木状の権力装置に回答者は巻き込まれてゆく。
質問されたら(あるいは政治選択を迫られたら)、まず質問自体が隠蔽している複雑な現実を見抜くことが必要である。シンプルな質問の影には、複雑な事情が隠されている。質問者が、なにを抽象化し、なにを省略し、なにを見えなくさせているのかを見定めなければならない。そうしないと、質問が進行してゆくにつれ、後戻り不可能なファシズムの罠に絡め取られた後であることに気づくなどという不幸に遭遇する可能性だってあるのだから。