ジャック・デリダの新刊『死を与える』

死を与える (ちくま学芸文庫)

死を与える (ちくま学芸文庫)

アブラハムの話題が出てきますね。この話は、倉橋由美子さんの小説で知っています。子のないアブラハムは、神に祈り、息子イサクを得る。ところが、次に神に一番大切なもの、すなわち息子イサクの命を捧げる(すなわち、殺す)。
デリダは、ヤン・パトチュカについて語っていますが、後半キルケゴールについて語り始めます。
贈与論から話した方がいいかな。レヴィ=ストロースの場合ですと、部族間の贈与がループを描いて閉じているわけです。女性交換(婚姻)も、その円環に沿って未開社会では行われているわけです。ところが、デリダはそこに、贈与としての贈与を持ってくるわけです。そういう見返しを期待しない純粋な贈与。これが一撃となり、予定調和のループがわずかながら開く、そこにデリダの目標があるわけです。
では、死とはなにか。アブラハムにとって、死とは?これまた、純粋な贈与の一形態として、予定調和のヴィジョンを破るものとされるわけです。
デリダの最良のテクストは、暴力的な加速度をもった文体で書かれる時です。