椎名麟三について
椎名麟三の『神の道化師・媒妁人』(講談社文芸文庫)を読んだことがきっかけで、椎名麟三熱が復活。『自由の彼方に』(講談社文芸文庫)と『重き流れの中に』(新潮文庫)を古書店で入手。『自由の彼方に』と『美しい女』は新潮文庫版で入手済だし、新潮現代文学の『椎名麟三集 永遠なる序章・懲役人の告発』も持っているのですが。
椎名麟三は、かなり好きな作家ですね。大江健三郎は、政治的な視線は持っているのですが、<死>に対する感覚に、少し不満が残ります。(これは大江の師匠格にあたるサルトルにも感ずることで、生と死を単に偶然性で捉えようとしています。実存主義の原点にあたるニーチェやキルケゴール、ドストエフスキーは、<死>に対する不条理感覚、研ぎ澄まされた緊迫感の意識を持っています。大江やサルトルには、これがないのです。)埴谷雄高は、墨絵で描かれたファンタジーという感じがしますが、椎名麟三はすごくリアルで、貧乏でどんづまりな感じを克明に描いていていいと思います。これ以上、堕ちるところがないところから書いているという点で、根源的リアルに達していると思うのです。まぁ、大江健三郎も、埴谷雄高も、好きな作家ではあるのですが。
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新潮日本文学 40 椎名麟三集 自由の彼方で 懲役人の告発 深夜の酒宴 媒酌人 両面作戦 勤人の休日
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