少年回廊BBS http://haruka.fool.jp/cgi/bbs2/light.cgi 投稿原稿

その場限りのレスに関しては割愛。ある程度、まとまった文章を再録。
[999] 一冊で二度おいしい作品(江藤蘭世名義で2004/05/29(Sat) 20:25に投稿)
『将棋殺人事件』を、やっと入手。作品中の「純四桂詰」が若島正氏作成のものに差し替えられています。
まず、ミステリとして愉しみ、次に「純四桂詰」で頭をひねる……一冊で二度おいしい作品となっています。
それにしても、『将棋殺人事件』の一見関係のなさそうな断章を読んでゆくと、次第に読み手の頭の中で全体が見えてくるという構成は、ぞくぞくっときます。

[1018] 幻想の蒼い薔薇 (江藤蘭世名義で2004/07/01(Thu) 22:02に投稿)
今回の青いバラの開発については、「最相葉月のなんでやねん日記」6月30日でも触れられています。
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/sunbbs8/index.html
なお、最相葉月さんの『青いバラ』(新潮文庫)の参考文献に、中井英夫氏の著作がみられます。
http://www.shinchosha.co.jp/cgi-bin/webfind3.cfm?ISBN=148221-7
ちなみに、『凶鳥の黒影〜中井英夫に捧げるオマージュ』(河出書房新社)の刊行日は、9月17日(!)です。

[1021] 古い乱歩の文庫に (江藤蘭世名義で2004/07/04(Sun) 14:06に投稿)
「『虚無への供物』の作者へ」ではなく、「虚無なる『虚無への供物』の作者へ」という言い方には、少し屈折したものを感じます。
角川文庫の『黒蜥蜴』、『一寸法師』の解説も、『虚無への供物』の著者だったんですね。(←新刊の本屋で探しても、たぶん無理だと思います。)あまり意識せずに読んでいました。今出ているものでは、谷崎潤一郎の『人魚の嘆き・魔術師』(中公文庫)の解説なんかもそうですね。
「やさしい吸血鬼」の出版元が知りたいです。

[1023] 虚無の中での遊戯 (江藤蘭世名義で2004/07/05(Mon) 00:00に投稿)
うーん、単純に「虚無なる」が先頭についているのは、なぜなのかと考えてしまうのですよ。勿論、この言葉は『哲学者の密室』の献辞なのですが、仮に※※※※さんが言った言葉だとしても、「虚無なる」が先頭についていたら、そこで考え込んでしまうのです。一体、「虚無なる」は「『虚無への供物』」にかかるのか、それとも「『虚無への供物』の作者へ」なのか。そして、それが「虚無」だということは、なにを指し示すのか。作者のイイタイコトを示せ、とかを、ね。(←国語の授業みたいだなぁ。)
しかし、サントリーの青い薔薇は、少し紫っぽく見えますね。
結局『トランプ』は何月に出るんでしょう?また、ミステリ・マスターズは出るんでしょうか。
実は『闇力』の続編が、ひそかに優先的に書き進められているとか……(???)

[1043] 『やさしい吸血鬼』(江藤蘭世名義で2004/07/16(Fri) 20:45に投稿)
先ほど郵便受けを確認したところ『やさしい吸血鬼』が届いていました。
へのへの先生、ご手配ありがとうございました。
東海さんは、相当な吸血鬼マニア(映画、幻想文学……)だったんですね。
次回の構想メモ「香りと花の話…悪い人はいないこと…」をみると、どんな話だったのだろうかと思います。

[1064] 『やさしい吸血鬼』その後(江藤蘭世名義で2004/08/06(Fri) 20:42に投稿)
今日届いた東海さんのお姉さんからの葉書によると、へのへの先生が『やさしい吸血鬼』で書かれていた「らくがき詩集」が見つかったそうです。それに『刻Y卵』のための音楽テープ(なにが録音されているのでしょう?)、ドラキュラの演劇のスライドとかも……。
『刻Y卵』というのは、しゃべくりのおかしみがあります。落語に近いようなかんじもします。また、恐怖映画の明暗が点滅してドックンドックンするかんじもします。いろんな要素が絡み合って、奇妙な味を出しています。

[1068] 『綺譚集』、その他 (江藤蘭世名義で2004/08/09(Mon) 23:15に投稿)
津原泰水氏の『綺譚集』(集英社)が、へのへの先生の推薦文(帯文)つきで、刊行されています。詳しくは以下のURLをご参照ください。
『綺譚集』に収められている短編は、毒性があったり、妙な味があったりしますが、どれも気品があって、耽美な世界だと思います。(先般から話題になっている嫌悪感を抱かせない描写を、この作品集もクリアしていると思いますが、そこは人それぞれですからね。)
それにしても、この造本はカバーをとった中身も、素敵です。
・『メフィスト』9月号が刊行されました。「ウロボロスの純正音律」第17回が掲載されています。前半で京極氏が活躍しております。後半の展開は…読んでみてのお楽しみということで。

[1077] 猥褻とはなにか (江藤蘭世名義で2004/08/22(Sun) 23:24に投稿)
『トランプ殺人事件』の刊行は、9月になったようですね。
さて、ここの掲示板では、最近「嫌悪感のあるヤラしさとは何か」が問題となっています。これは一言で言えば「猥褻とはなにか」ということです。
(1)法解釈学的には、相対的猥褻概念と絶対的猥褻概念があり、前者は社会の変化とともに猥褻の定義も変わるというもの、後者は猥褻の定義は不変で、だめなものはだめというものです。現在では、前者の定義が優勢でしょうね。
(2)過去の裁判記録を見ますと、「芸術か、猥褻か」の論争があり、訴えられた側は、この作品は芸術性が高いので、猥褻感を人に与えないという論法を展開することがあります。しかし、判例では猥褻であるものは、芸術性が高かろうと低かろうと、だめなものはだめとしています。
(興味のあるかたは、『ジュリスト憲法の争点』、伊藤整『裁判』旺文社文庫、『サド裁判』現代思潮新社などをお読みください。)
個人的には、三島由紀夫の『不道徳教育講座』角川文庫に書かれた猥褻の定義がしっくりしています。三島が(三島と正反対のタイプの)サルトルの『存在と無』を挙げて、猥褻とは目的を失って<もの>としてそこにあることだ、という説明をしています。
官能路線の長編を書こうとされているへのへの先生に要望を書くとすれば、嫌悪感を与えるものであっても、常識を逆なでしてもいいので、意味のある、生命の全面肯定に至るような凄いやつをお願いしたいということです。
それはさておき、※※さまへひとこと。
『綺譚集』には<ソリマチカタシ>、<ヒロスエリョウコ>、<スズキキョウカ>も登場します。お楽しみあれ。

[1081] ミステリーこそ極上の快楽 (江藤蘭世名義で2004/08/23(Mon) 21:59に投稿)
けがらわしい話が続いているので、ひとこと。ミステリー・マニアとしては、何を題材にするにせよ、やっぱりミステリー仕立てにしてほしいということです。
例えば、いま私は、以下の汚らわしいタイトルの書名とにらめっこしているわけですが、やっぱり頭の中ではなにがしら推理が展開しており、考えることがこの上なく快楽だったりするわけです。
ジャン・ド・ベルク『イマージュ』行方未知訳
作者不詳『閉ざされた部屋』行方未知訳
作者不詳『快楽の生贄たち』行方未知訳
作者不詳『背徳の仮面』行方未知訳
作者不詳『ヴィーナスの祭壇』行方未知訳
私の考えているのは、行方未知が、生田耕作にみえてしょうということです。ここでは行方未知を「ゆくえみち」ではなく、便宜上「いくかたみち」と読むことにします。「いくかたみち」ー「いくた」=「かみち」となります。次に「かみち」が「こうさく」と同じか検討します。「かみち」は「KA+みち」となります。「こうさく」は「KOUSAKU」ですから、「KA+OUSKU」となります。次に、共通の「KA」を削除。残りの「みち」と「OUSKU」が同じかどうかさらに検討。「OUSKU」は、さらなる綴り変えにより「KO+U+SU」となります。「KO+U+SU」は「Course(行路)」であり、「即ち、「道=みち」と看做すことができます。つまり、「行方未知」=「生田耕作」となるわけです。
要は、こういう骨の髄まで推理好きの人間をうならせる特上の作品を望む、ってことです。

[1082] 愚考 (江藤蘭世@未だに林檎のほっぺ 名義で2004/08/24(Tue) 00:04に投稿)
エロティシズム関連の文学とか芸術に現れたイメージを分類すると、以下のようになる。あくまで参考までに。
(類型1)D・H・ロレンス、W・ライヒ
性的なものを生命の根幹にあるものとして捉えなおし、生そのものの肯定に向かうタイプ。性的なものは隠蔽しておくべきというヴィクトリア朝的なモラリストにとって、これは嘆かわしい行為であり、猥褻なものとして映ることだろう。
W・ライヒの性解放の理論を映画化したドゥシャン・マカヴィエフの作品に『WR:オルガニズムの神秘』という物議を醸し出す作品がある。
(類型2)マルキ・ド・サドジョルジュ・バタイユ
性的なものと、死や破壊の観念を結びつけるタイプ。「エロティシズムとは死に至るまでの生の称揚である」というバタイユのことばは、その本質をよく伝えている。
J・G・バラードの「クラッシュ」およびD・クローネンバーグによるその映画化は、エロティシズムと自動車事故を結び付けようとする。登場人物たちは、交通事故にエクスタシーを見出すのである。
(類型3)J・P・サルトル大江健三郎
性的なものをネチネチした粘液的なものや、物質性に見出すタイプ。サルトルの「水いらず」、大江の「性的人間」など。物質と精神、肉体と心の二律背反があり、物質や肉体への嫌悪感の裏には、透明な精神性への希求がある。
(類型4)P・クロソウスキー
幻影や模造の増殖のなかに、倒錯性を示すタイプ。クロソウスキーは、自分の妻をつかって客人を歓待するという主題を小説にしたり、絵にしたり、映画を撮らせたりしている。
楽古堂さまの「男性の欲望によって、著しく歪められた場合」の女性から見られた男性は、<他者>ということです。
この<他者>が、エロティシズム成立の鍵になってくると考えます。
※※※※さまの「××が書いたものなら、絶対に嫌悪感なんて抱かない!!」というのも、その人にとって××が<他者>でないから、エロティシズムが成立しないということなのでしょう。
嫌悪感のあるイヤらしさを書くのに適しているのは、妄想癖のある独身者か、並外れた放蕩者ではないでしょうか。となると、へのへのさまは後者を目指すしか……いやはや、これまた独身者の妄想でした(今日も、赤面)。

[1171] 少年回廊来訪者の方へのアンケート(江藤蘭世名義で2004/12/12(Sun) 21:38に投稿)
さて、年末も近づき、「このミス」や「本ミス」が刊行される季節となりました。今年はゲーム殺人事件三部作が、創元推理文庫に収められ、再び入手しやすい環境が整いました。これを機会に、新しい読者の方に出会えることを期待しております。
ところで、来年を迎えるにあたり、竹本ファンがへのへのさまにどのような方向性を期待しているのか、これを機会に伺いたく思います。竹本ファンの意識調査です。どうぞご協力お願いいたします。
質問1.あなたがこれまでに読んだ竹本作品で、最もお気に入りの作品はなんですか。
質問2.今年読んだ竹本作品で、最も印象に残った作品はなんですか。
質問3.竹本作品のなかで、一番好きなキャラクターは、誰ですか。
質問4.以下は、これから刊行されるであろう作品群です。読みたい順に、アルファベットを並べてください。
a「ウロボロスの純正音律」、bミステリマスターズの新作、c漫画第二作目、d「黙示のクー」(「クー」「鏡面のクー」の続編)、e「摂動」(「腐蝕」「連星ルギイの胆汁」の続編)、f牧場智久シリーズの続編(ジャーロ掲載の短編に、新作を加えまとめる)、g「闇に用いる力学」の続編、hパーミリオンのネコシリーズの続編、i「偶という名の惨劇」(「匣の中の失楽」の続編)、jゲーム殺人事件の新作(例:綾辻行人氏との共著「麻雀殺人事件」とか。)、kその他(具体的にお書きください。)
質問5.今年読んだ竹本作品以外のミステリで、お勧めの作品がありましたら、お教えください。
ここにお集いの方は、竹本作品に親しんでいらっしゃる方ばかりだと思いますので、ぜひともご意見をお聞かせ願います。

[1176] アンケート回答4 (江藤蘭世名義で2004/12/16(Thu) 00:05に投稿)
皆様、ご回答ありがとうございます。同じ質問なのに、それぞれ回答者の個性が現れているようで、興味深く拝見いたしました。
>へのへのさま
>『摂動』は『腐蝕』や『ルギイ』の続編ではないですし、『偶という名の惨劇』は『匣』の続編ではありません。
どうも私、早とちりと思い込みが激しいようで、あちこちでとんちんかんなことをいいふらしているような気がします(恥ずかしい!)。そこで、この誤りの修正を考慮したうえで、自分もアンケートに答えてみましょう。
回答1>『腐蝕
作者の傾向が、一冊の本に見事に纏まっているという点で、誰かに勧めるとしたら、この本を選びます。
回答2>「彼ら」
シャープな作品が好きということでしょうか。
回答3>佐伯千尋
彼女が出てくるとき、いつもどきどきします。
回答4>a,c,b,d,g
こんな優先順位で、刊行していってほしいな、という勝手な希望です。d,gまでちゃんと到達して欲しいのですが。
回答5>綾辻行人暗黒館の殺人
「読んだ!」という充実感が味わえます。日常とは違う時間がこの作品の中に流れている気がします。
それにしても、普段の話題は実にフリーですが、こういうアンケートに対して、きちんと竹本ファンとしてレスが帰ってくるところが凄いですね。(感動!)
このアンケート、年末まで続行しますので、まだ未回答の方はぜひ応えてくださいね。(毎年年末に、行うといいのかも?)

[1181] ちなみに (江藤蘭世名義で2004/12/19(Sun) 22:29に投稿)
ちなみに、私はメイド喫茶というものを、滝本竜彦原作・大岩ケンヂ漫画の『NHKにようこそ』(1)で知りました。
どうもウェイトレスが、サイバドール・メイ(←画像検索をしてください)みたいなコスプレをしているらしいです。
検索してみると……秋葉原だけじゃないようですね。

[1189] 本棚探偵の冒険 (江藤蘭世名義で2005/01/27(Thu) 21:19に投稿)
喜国雅彦著『本棚探偵の冒険』が文庫になりました。(双葉文庫)表紙の絵もそそられますが(デザイン協力:ステュディオ・パラボリカって?ミルキィ・イソベさんがからんでいるということなのでしょうか?)中身を開けると、素敵な書名がぎっしり。脳内麻薬物質たらたらの世界になります。
喜国さんは、本来「本は読むために買う」だったはずが、古本屋さん通いのせいで「買うために買う」になり、今や「本棚を作るために買う」に至っているとか。うーん。重度のビョーキですね。かくいう私は、軽度と中度の中間あたりです。身を滅ぼさないように気をつけねば。本は重いですから、家の床が、徐々に耐えられなくなりますからね。(深刻)
ちなみに、竹本ファンの方は、この本に収録された「俺のバノラマ島」は必読です。

[1195] 幻視の文学としての読み方 (江藤蘭世名義で2005/02/06(Sun) 22:05に投稿)
楽古堂さまによる『風刃迷宮』、『クレシェンド』、『カケスはカケスの森』の読み方は、竹本健治の詩的側面をクローズアップさせるものであると思います。これは、幻視の文学として竹本健治を読んでいこうというものです。どうみても、竹本健治の本は、たんなる謎解きミステリに留まるものではありませんから、こういう観点は貴重です。「ポオの芸術態度は、詩を最高に置き、次に効果を持つ散文、そして写実的な散文を最下位とした。」(埴谷雄高「黒猫」より、『幻視の詩学思潮社詩の森文庫版71ページ)