清涼院流水著『とくまつ』読了

この物語の主人公は「解かない限り自分が生まれてきた意味がわからなくなってしまう謎」(110ページ)を抱えています。私が清涼院流水に好感を持っているのは、こういうことをさらりと書いてしまうからです。
流水大説の根幹には、こういうマジな部分がまっすぐに通っています。
世界を暗号の体系と見立てる思考は、竹本健治にも見られます。
ヤスパースにも、世界を暗号文字と見立てる思考が見られます。これらを、すぐさま同一とするのは、まちがいのもとですが、まったく無縁でもなさそうです。
清涼院の小説を、単なるおふざけとしてか見ていない人は、こういう根幹部分が見えていないのではないかと思います。