『serial experiments lain lif.04』

serial experiments lain lif.04 [DVD]

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serial experiments lain』は、リアル・ワールド(現実世界)とワイヤード(電脳世界)の皮膜のような境界に立つ少女岩倉玲音を主人公とするアニメである。
serial experiments lain lif.04』には、layer:09からlayer:11が収録されており、シリーズ全体の世界観を提示したlayer:09 PROTOCOLが収録されている点で、特に重要である。
layer:01からlayer:08によって示されたのは、異常なほどワイヤードが拡大し、現実世界を脅かすまでになっているという世界設定である。
玲音は、物語の進行と共に、ワイヤードの世界に没入してゆき、コンピータを改造し、部屋を冷却のために水浸しにし、体中にコネクトのためのコードを巻きつける。ぐるぐる玲音とは、このことを指す。
ワイヤードのなかで傑出した能力を得た玲音は、リアル・ワールドにまで影響を及ぼすようになる。預言があって、現実化されるというテーゼが示される。どうやらリアル・ワールドは、イデーの具現化であり、そのイデーを創造するのは、ワイヤードの中のようだ。
しかし、突出し始めた玲音に、監視の眼が光るようになる。橘総研とナイツという組織が動き始めたのである。
layer:09では、アメリカのロズウェル事件、MJ−12文書から始まり、ヴァニヴァー・ブッシュのMEMEX(ハイパーメディアシステムの元型)、ジョン・C・リリーのアイソレーション・タンクでの実験、テッド・ネルソンのザナドゥ(ハイパーテクスト構想)が語られる。これらのコンピュータ構想は、アメリカの異端科学から生まれてきたことを言おうとしているようだ。さらに、ダグラス・ラシュコフが紹介され、彼の地球人口は脳内のニューロンと同数に向かいつつあり、ネットワークとして相互接続すべきという説が紹介される。(ここまでの人物は、実在の人物)
次に紹介されるのは、この物語の登場人物、橘総研の英利政美である。彼は第七世代目のワイヤード・プロトコルに、シューマン共鳴ファクターを加え、デヴァイスなしのワイヤレス・ネットワークを構築しようしたというのである。
玲音が対峙するのは、この英利政美。ワイヤードの情報を支配することで君臨しようとする神である。
ワイヤードに、神はいらない。神とは、関係のネットワークを支えるゼロ記号と言い換えることができるだろう。ゼロ記号を認める立場が、構造主義と呼ばれるとしたら、『serial experiments lain』はゼロ記号批判によって、ポストモダンに到達する。恐るべし、lain
まだ、『serial experiments lain』は、未解明の謎が残るアニメなのである。
脚本は、『魔法使いTai!』の小中千昭。作画は『NieA_7』『灰羽連盟』の安倍吉俊。岩倉玲音役は、後に『ブギーポップは笑わない〜Boogiepop Phantom』で、ブキーポップ役を演じた清水香里