雨宮処凛著『すごい生き方』

雨宮処凛著『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)の冒頭にある「はじめに」によると、イラク戦争開戦以来、民間人の死者数は2万6000人から3万人であるという(2005年10月現在、「Iraq Body Count」調べ)。一方、日本における自殺者数は、2年間に6万人以上であり、一日に100人近い人が命を絶っているという。
悪の枢軸を訪ねて』や『戦場へ行こう!〜雨宮処凛流・地球の歩き方〜』で、イラク問題に深く関わってきた雨宮処凛が、本書を刊行したのは、緊急のメッセージという意味合いがある。
なぜ、雨宮処凛が自殺の問題に黙っていられないかといえば、雨宮自身、生きづらさからリストカットを繰り返した人間だからである。その体験は、彼女の自伝『生き地獄天国』に詳しい。
雨宮処凛は、『自殺のコスト』という本も書いている。こちらの方は、自殺の善悪は一旦留保し(そうしないと自殺志願者が読んでくれないからである)、コスト面から本当に自殺してもいいのかを冷静に追及した本である。
本書は『生き地獄天国』の実存的な体験談と、『自殺のコスト』に見られた情報収集能力をかけ合わせ、リストカット自傷行為)やオーバードーズ(薬物過剰摂取)を繰り返す人々に向けられた渾身のメッセージである。
ちなみに、本書の刊行にあわせ、雨宮処凛による人生相談のブログも進行中である。
http://www.sanctuarybooks.jp/sugoi/blog/
雨宮処凛のメッセージとは、「すごい生き方」をすればいいということである。リストカットオーバードーズをして、死にたいとか、生きづらいとか思う。そうした体験をバネにして、型破りに生きてゆくということである。
これは並みの処方箋ではない。いじめられたことも、リストカットしたことも、オーバードーズで胃洗浄したことも、すべてよかった……生きづらいかったことも、死にたかったことも、すべてよかった……これらは今のわたしを誕生させるうえで必要なことだったのだ……。
すべてよし。
OH!YES.
これは生の全面肯定である。この生命力のほとばしりは、私たちを至高体験へ導く。
雨宮処凛は、このようなパワフルな生の確信をどこから得たのか。
それは「こわれものの祭典」である。
http://niigata.cool.ne.jp/cat_girl/koware/
「この世界に正しい生き方はない。」と雨宮は言う。各人が各人のやり方で、自分の生を開花させ、すごい生き方をすればいいのだと。
世界に自分の居場所が見出せず、本当の自分がわからなくなったときに読むべき本。なにより、元気が出るのが嬉しい。