「プロテスト・ソング」「魔法のじゅうたん」解説

「プロテスト・ソング」というのは、昔のフォーク・ソングにあったジャンルのひとつです。「プロテスト・ソング」を読んで、イラクを思い浮かべる人もいれば、パレスチナを思い浮かべる人もいるかもしれません。また、別の事柄を思い浮かべる人もいるかも知れません。あらゆる暴虐の現場で、異議申し立ての表明となる歌があればと思い、書き綴りました。<殺すために生まれてきたんじゃない、殺されるために生まれてきたんじゃない>というのは、「犠牲者も否、死刑執行人も否」(アルベール・カミュ)ということです。最近の私は、人間というものは星のまたたきほどの長さの生だというのに、それを人為的な理由(戦争、テロ、強制収容所……)でさらに短くするということに、なんと不条理で哀しいことか、と考えることしきりです。そんな考えが、こういった歌詞となりました。
「魔法のじゅうたん」は、それと反対に<君とぼく>しか出てこない閉じられた世界です。ここで<君とぼく>と言いましたが、西尾維新とは関係ありません。昔、角川文庫から出ていた片岡義男訳の『ビートルズ詩集』と、新潮文庫から出ていたオフコースの『May be the best year of my life 』からの影響が大きいと思います。このふたつの共通項は、簡潔な透明感のあることばで、独自の宇宙像(コスモロジー)を提示するところにあると思います。ビートルズの「ハロー・グッドバイ」がなければ、オフコースの「Yes No」はなかったと思われます。また、ジョン・レノンの詩とポール・マッカートニーの詩の差異について考えてみたことがあります。レノンの詩は、物事にのめりこみ、次第に<君とぼく>の直接的な関係だけになってゆきます。何者も介在しないのです。
ひょっとして、これらの歌詞にメロディーがつくかも知れません。極秘プロジェクトが進行中なのです。これらは、もう少しはっきりしたら、ご紹介できると思います。

May be the best year of my life (新潮文庫)

May be the best year of my life (新潮文庫)