注目の新刊

京極夏彦の『新書版 ルー=ガルー 忌避すべき狼』(徳間書店)が刊行されました。SFスタイルで書かれて作品です。一種の管理社会批判として、私は捉えています。忌避すべき狼とは、近未来におけるアウトサイダー、野蛮な存在なのです。
これが書かれていた当時「F・F・N」(フューチャー・フロム・ナウ)参加メンバーに対するお礼はがきのことが「アニメージュ」に載っていました。「F・F・N」とは、『ルー=ガルー』のおける未来の設定を読者がするという企画です。私が疑問に思うのは、果たしてはがきが全員に出されたのかということです。私が参加メンバーであることは、巻末をご覧いただければ判っていただけると思いますが、私はこのはがきを受け取っていないのです。未だ謎の残る事柄です。
また、笠井潔の『ヴァンパイヤー戦争5 謀略の礼部クーデター』(講談社文庫)も刊行になりました。
『ルー=ガルー』の終わりのほうで、善/悪、強者/弱者……といった二元論を媒介にした物語を紡ぎだすのは容易いが、現実はそんなに単純ではないというようなことが述べられている箇所がありますが、これは笠井さんには当てはまらないでしょう。少なくとも、笠井さんはその陥穽に気づいており、それをひっくり返そうとしている。しかし、そのひっくり返し方がまだ不十分なのです。
コムレ教を悪しきオウムの水準から遠く離れたものにするためには、「ウラ日本史観」をもう一回反転させる必要がありますが、そこまでは行っていないのです。

ルー=ガルー (トクマ・ノベルズ)

ルー=ガルー (トクマ・ノベルズ)