本日、アレクセイの花園 http://8010.teacup.com/aleksey/bbs に投稿するかも知れない下書き原稿。

本格ミステリ作家クラブ編『透明な貴婦人の謎〜本格短編ベスト・セレクション』(講談社文庫、解説笠井潔http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2749629 の帯に、「アンソロジー刊行記念、読者プレゼント!」の文字があります。
この本は、以前刊行された『本格ミステリ01』(講談社ノベルス)を2分冊にしたものの後半部分で、先月刊行された本格ミステリ作家クラブ編『紅い悪夢の夏〜本格短編ベスト・セレクション』(講談社文庫)http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2749416 が前半部分にあたります。
読者プレゼントというのは、『透明な貴婦人の謎〜本格短編ベスト・セレクション』と『紅い悪夢の夏〜本格短編ベスト・セレクション』の2冊を買って、抽選で、東京都内で行われる本格ミステリ大賞の開票現場に立ち会う権利を取得するというものです。
ところで、この文庫の帯を始めて見た時、少し不快感を覚えました。これは、いつもの講談社のプレゼントではなく、本格ミステリ作家クラブの、さらにいえば、この文庫解説者の持ち込み企画ではないかと思いました。講談社のプレゼントは、昨日のはてな出張所にも書きましたが、舞城のフェイスタオルだとか森博嗣のバッグだとか、こたつ組のマグネットとか、ビーチボールとか、バルーン型のいすとかです。それは、どこかほほえましいものです。ところが、この企画は、「これこれこーゆう偉い賞があるんだ。それに立ち会えるだけでも名誉なことなのだ。」と考えている人によってもたらされたものです。
しかも、開票なんていう地味な現場を見せるというのは、<この賞が不透明な密室政治によって決められていると思われているのじゃないか>という疚しい意識がもたらしたもののように思えるのです。
しかし、この人は勘違いをしています。私は事件は開票現場で起こっているんじゃなく、八ヶ岳のスキー合宿現場で起きているのだと考えます。そこで、脱コード派(脱格系)ミステリへのあからさまな嘲笑を耳にした人が、その価値観を内面化し、自分もまた嘲笑する側に立つようになると考えます。なぜなら、そうしないと自身が嘲笑される側に立つことになるからです。
初期の矢吹駆三部作を書いていた笠井潔は、こういう日本的なシステムを対人恐怖症的な社会だと侮蔑していました。しかし、その後、彼自身が権威と化してしまい、しかも、そのことに自覚的でないのです。
彼は、おそらく誰の作品に投票せよとは言わないでしょう。しかし、彼がどう考えているかを知っている感化された者たちは、彼の無言のまなざしによる圧力で、彼の意中の作品に投票するのでしょう。