『コズミック・ゼロ〜日本絶滅計画』
清涼院流水の『コズミック・ゼロ〜日本絶滅計画』は、かなり緻密に組み立てられた政治経済小説である。
- 作者: 清涼院流水
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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おそらくは、デビュー作『コズミック』と、背後の伏線としては『カーニバル』の再話であるが、リアリズムの文脈に置き換えられ、かなり実現性の高い「絶滅」計画を、構築(JDCシリーズを念頭に置くと、再構築)している。
ほぼ同時期に発表された『B/W』が、乗り越えるべき先行作品として『羊たちの沈黙』を想定したとすれば、『コズミック・ゼロ』は、作者本人は一切触れていないが、おそらく村上龍の『愛と幻想のファシズム』を想定しているのではないかと、邪推する。なぜ、そう思うのか。『愛と幻想のファシズム』では、全世界の政治経済を牛耳ろうとする多国籍集団として「ザ・セブン」が登場する。対する『コズミック・ゼロ』では、日本絶滅計画を遂行する英精鋭チームとして「セブン」が登場する。さらに、『コズミック・ゼロ』の「ゼロ」は、物語中の文脈では「絶滅」を示しているが、『愛と幻想のファシズム』の主役級の人物名でもある。
- 作者: 清涼院流水
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- 作者: 清涼院流水,西島大介
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『コズミック・ゼロ』の本当の怖さは、ファシズムやテロリズムによるものではなく、一切の思想の存立根拠を、根こそぎ引っこ抜く徹底したニヒリズムに起因している。そして、ほぼ同時期に発表された『B/W』は、このニヒリズムを見据えて、対峙するという姿勢で書かれている。清涼院の「流水大説」は、その極端なストーリー展開によって、逆説的にメタフィジックな傾向を招きよせるのである。