心の鏡 ドメスティック・バイオレンス撲滅キャンペーンソング

心の鏡 (music:飛鳥英二)

「心の鏡」は、ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)撲滅キャンペーシソングです。
私が行ったことはふたつ。被害者心理に自己を同調させ、実存の根底まで下降し、なぜ、DV環境に隷属してしまうのか、なぜ嵌って抜けられなくなるのかを解明すること。被害者視点に自分を置いてみて、状況からの脱出口を切り開いてみせること。

(処方箋1)まず状況を抜け出し、「自−他」を客観視せよ。

Q1 隷属の理由。抜けられなくなる理由。
・環境適応能力。(安部公房 『砂の女』。砂の家という特殊な状況にすら、慣れてしまう。)

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)


・苦痛を、快楽に転化する。(ドストエフスキー『地下生活者の手記』。)
脳内麻薬物質の分泌を、条件づけする。
地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

・自分の存在価値が、相手に愛されているかどうかで決定すると思い込んでいる。生の意味を求めて激烈化する恋愛感情が、相手を追い詰め、暴力となって暴発する。(雨宮処凛­『暴力恋愛』。)
暴力恋愛 (講談社文庫)

暴力恋愛 (講談社文庫)

・相手の心を繋ぎとめるため、悪辣な環境を甘受する。自分の身体を侮蔑する観念の倒錯の発生。(ポーリーヌ・レアージュ『O嬢の物語』)
O嬢の物語 (河出文庫)

O嬢の物語 (河出文庫)

相手の苦しむのを見たいという心理が、愛と呼べるのでしょうか。単なる支配欲ではないか。真実を直視せよ。
<結論> 愛の定義を、「惜しみなく奪うものとしての愛」から、「惜しみなく与えるものとしての愛」へ修正せよ。
惜みなく愛は奪う―有島武郎評論集 (新潮文庫)

惜みなく愛は奪う―有島武郎評論集 (新潮文庫)

(処方箋2) 「心の調律」を行いなさい。

<確認事項> DV=犯罪。暴力をふるう側=犯罪者。

Q2 過去にDVの被害にあった人が、再度DVの被害に遭いやすいのはなぜか?
ヴァルネラビリティー、vulnerability、負性、攻撃誘発性。
・『チベット死者の書(バルドゥ・トゥドル)』 に出てくる「鈍い光」と「まばゆい光」。
 『チベット死者の書』では、死後、最初に現れるのは青の光。「鈍い光」に導かれると、輪廻のなかを彷徨い、「まばゆい光」に向うと、解脱に至る。『チベット死者の書』には、死後見るヴィジョンは、光も闇も、菩薩も悪魔も、すべて幻影であり、汝の心の世界の反映なのだという合理的な説明がなさ­れている。非仏教徒であっても、示唆的な内容では?

原典訳 チベットの死者の書 (ちくま学芸文庫)

原典訳 チベットの死者の書 (ちくま学芸文庫)


Q3 「心の調律」とは何か。
・人間の調和的発展への信頼を基調にした作品(ゲーテの『ファウスト』、ベートヴェンやモーツァルト等)に親しむ。
ファウスト〈1〉 (新潮文庫)

ファウスト〈1〉 (新潮文庫)

ファウスト〈2〉 (新潮文庫)

ファウスト〈2〉 (新潮文庫)


・高い理想を掲げ、常に向上心を失わない人間になること。心の安定性を持つこと。
・暴力をふるう者に、心の隙を与えない。彼らは「鈍い光」には近づくが、「まばゆい光」には、耐えられない。
こうした発想を基に、この歌詞を書きました。

なお、曲の中のセリフは、私が考えたものではありません。飛鳥英二くんによるものです。

「心の鏡」

作詞:原田忠男(Tadao Harada)
作曲:飛鳥英二(Eiji Asuka)
編曲:飛鳥英二(Eiji Asuka)


周りの人が いつも君を苛み 苦しめる
そんな苦痛には 慣れたと 君は言う
苦痛すら 快楽なのだと
愛から始まったはずなのに
際限のない憎しみが 君を襲う
止めるんだ 渦巻く嵐のなかに叫んでも かき消されるばかり

この世界は 君の心の鏡
君が哀しみに染まるとき 世界は青く染めあがる

君の波動が 負の力を 引き寄せる
にぶい光に 夜の蛾が あつまり 
周りを 舞い続ける
苦痛に慣れることなく
渾身の力で 脱出せよ
スイッチを入れ 世界をまばゆい光で 照らすがいい

この世界は 君の心の鏡
君が悦びにむせぶとき 世界は赤く燃え上がる