アンナ・カヴァンに注目しよう

薔薇十字制作室SIDE B BBS http://bbs1.fc2.com/cgi-bin/e.cgi/3417/ に、細野晴臣の『F.O.E.MANUAL』(扶桑社)のことを書いたので、少し補足しておこう。
BBSに書いた原稿は、以下の通り。
『口に出せない習慣・奇妙な行為』を書いたドナルド・バーセルミは、高橋源一郎のポップ文学に影響を与えたといわれています。『さよならギャングたち』とか『ジョン・レノン対火星人』とかは、日本文学だけを読んでいると、どこから来たのかと不思議になりますが、バーセルミを読むと、ああこの表層的なかんじと納得できるものがあります。(とはいえ、上記2作以降の高橋源一郎には関心が持てませんが。)
アンナ・カヴァンに注目したのは、細野晴臣の『F.O.E.MANUAL』(扶桑社)というタレント本の影響です。FOEというのは、細野がYMO以降に作ったテクノ・アンビエント系のバンドです。
この本は、実際は重要部分を浅田彰大原まり子が書いていて、ドゥルーズ=ガタリに関する言及もあれば、P・K・ディックやアンナ・カヴァンの名前も文中に見られます。ただし、どこを誰が書いたかという詳細は不明で、単に巻末に執筆者として名前があるだけです。
ドゥルーズ=ガタリのことを書いたのは、浅田彰でしょう。P・K・ディックやアンナ・カヴァンのことを書いたのは?大原まり子の趣味は、フレドリック・ブラウンとかアルフレッド・ベスターですから、これも浅田彰と考えるのが妥当かと思います。
ちなみに大原まり子浅田彰は、対談したことがあり、そのときクローネンバーグ監督の『ヴィデオドローム』が最高と言うことで意気投合しています。
アンナ・カヴァンは、カフカを意識してつけられたペンネームらしいです。『氷』というのが、凄いです。自分が司令に追いかけられているとか、世界が氷で覆いつくされてゆくとか強迫観念の世界です。ニューウェーヴSFの極北として評価されています。
以下は補足。
アンナ・カヴァンは、サンリオSF文庫より『愛の渇き』、『ジュリアとバズーカ』、『氷』の3作品が刊行されていた。また、『NW−SF』に『アサイラム・ピース』が翻訳掲載されたことがある。
アンナ・カヴァンは、ヘロイン中毒患者で、その禁断症状から生まれる強迫観念を、作品内に定着させている。作品自体は、フランツ・カフカに通じる面を持ち、権力装置の存在を想定させる世界を描いたり、J・G・バラードのニューウェーヴSF『結晶世界』を極限にまで推し進めた世界を構築している。作品は普遍的な人間の条件を追求しており、単にヘロイン中毒者の病的な妄想として片付けるべきではない。