「探偵小説」殺本事件

シャンカラの『ウパデーシャ・サーハスリー』(岩波文庫)とショーペンハウエルの『女について』(角川文庫)を、物入れの中から探し出す。

ウパデーシャ・サーハスリー―真実の自己の探求 (岩波文庫)

ウパデーシャ・サーハスリー―真実の自己の探求 (岩波文庫)


南原兼の『ナイトはお熱いのがお好き』(角川ルビー文庫)のサイン本が見つかる。南原兼とイラストの桃季さえのサインである。これは、要するにボーイズラブのジャンルの本である。
ナイトはお熱いのがお好き (あすかコミックCL-DX)

ナイトはお熱いのがお好き (あすかコミックCL-DX)


ところで、先ごろ清涼院流水大塚英志箸井地図の『探偵儀式II』(角川コミックスエース)が刊行された。これは、清涼院流水のJDCの設定をもとに、大塚英志が原案を考え、箸井地図が漫画化するというものである。興味深いのは、この漫画が大塚による「新本格」への批評となっている点である。
探偵儀式 (1) (角川コミックス・エース)

探偵儀式 (1) (角川コミックス・エース)

探偵儀式 (2) (角川コミックス・エース)

探偵儀式 (2) (角川コミックス・エース)

JDCの探偵による事件の推理に対し、大塚の『多重人格探偵サイコ』などと共通のキャラ笹山徹は、その「新本格」的虚構性を突く。現実の事件は、密室殺人などというのは稀有だというのに、「探偵小説」的探偵は、無理やり自分たちの趣味にあう殺人形式に押し込める。こんなのは、虚構であり、お前たちJDCは現実が見えなくなっているのだと。
この論調は、先日の有栖川有栖の『モロッコ水晶の謎』への杉澤評と似ている。現実に目の前で人が倒れたら、蘇生するように務めるのが先決事項という杉澤氏の指摘は、まっとうな論理である。しかし、「探偵小説」としては、そこで蘇生されて死者が出ないとなると困るわけである。そこで、蘇生できるものも、とりあえず死んでいただく、これが「探偵小説」的なねじれたロジックなのである。
しかし、ここからまた別の物語が始まる可能性がある。『「探偵小説」殺本事件』、犯人は杉澤氏、動機は「新本格」のロジックがねじれているから。うーん、メタ・ミステリーか、受けないな、たぶん。
話を元に戻す。『探偵儀式II』だが、ついに「N月R太郎」さんと「U山H出夫」さんまで登場してしまった。あからさまに、このモデル人物を指し示してどうしようというのだろう。大塚は『「新本格」殺本事件』でも書こうというのだろうか。