歴史的経緯

ここで靖国神社と他の神社の歴史的経緯の違いに着目してみよう。
靖国神社の前身にあたるものは、1869年(明治2年)に建立された東京招魂社である。靖国神社と改称したのは、明治12年のことである。
他の神社は、明治元年(1868年)の祭政一致の布告の際に、明治政府の直接支配下に神社・神職を組み入れることとなった。なお、このとき、神仏分離も為されている。さらに、明治4年(1871年)、太政官布告第234号により、神社を国家の宗祀とし、「官社以下定額及神官職員規則等」(太政官布告第235号)により、社格制度を定めている。社格制度とは、伊勢神宮以外の神社を官社(官幣社国幣社)、諸社(府社、藩社、県社、郷社)に区別する制度のことを言う。こうして神職は、官公吏となったのである。
靖国神社は、国のために殉死した兵士を軍神として崇め奉るためにつくられたものであり、以前からあった神社を明治時代になってから、国家体制の枠組みの中に組み込んだものとは歴史的経緯を異にしている。